『きゃっ。宗!? え、こんな急に!? こ、こ、こっ! 心の準備が!!』
「え、嘘?? 俺いつの間に寝てた?? は? 嫌、それはない……」
『宗、だよね。本物の宗だよね?? きゃああー』
あたふたする私。神様の強引!! 全くもう。
「は? ……さ、き、か? 生きて、いや、そんなはずは……?」
まあ、そうなるよね。唖然とした宗は私を舐めるように見る。
顔が青白い。腰抜かさないか心配なレベル。まあ、ベッドに座ってるから抜かしても怪我はしないけれど……。
はあ。冷静になれ。ココは私が無理やり落ち着くべき立場だ。
深呼吸してー。はあー。
よし。大丈夫。私はパチパチと瞬きを強くして気合を入れる。
『生きてはないよ。私はもう幽霊。期待させてごめんね』
でもよかった。ここが宗の家っぽいところで。多分部屋の中身見る感じ、彼の個室だろう。
オシャレな音楽雑誌とか古着雑誌とか、お笑いDVDなんかがあるし。
全部彼の趣味だったはずのものだ。漫画や小説もたくさん本棚にあるし、彼は多趣味だったから。
あの頃使ってたほんのり甘いメンズの香水も、部屋にある。真似して買ったっけ。懐かしいなあ。部屋もその香り。
ああ。懐かしい宗。
私は今、彼の側にいるんだなぁ。
こっちの方が夢みたいだよ。
人より少し長めのサラサラな黒髪も、アーモンド型のキリリとした大きな目も、スラリと細身の身長も何もかもがあの頃と変わらないなあ。いや、少し身長は伸びたかも?
『あらめて久しぶり、宗、元気だった? 私は元気だったよ』
反射的に引き攣り笑いを浮かべる私。他にどういう表情しろと。
ベッドの上に座って、漫画を読んでいた宗は漫画を床に落とした。
「あ、ああ。これは夢か? 夢だよな? ありえない……嘘だろ」
コメディ漫画ならほっぺたを自分でつねりそうなぐらい。
宗はあたふたして、時計を見たりスマホを見たりしていた。要は現実かあちらこちらで確かめてるのだろう。
このまま誰かに「咲香の幽霊が出た!」と大音量で通報してしまいそうで怖い。
それは困る。特に、……アイツには。