「お母さんも、咲香が大好き。家族みーんな、咲香を忘れないからね」
『……ありがとう。お母さん。友也』
「村崎はお礼を言ってます。お母さんの声、届いてますよ」
「本当に、良かった。あの子は今苦しんでないのかしら」
「それは、内面はわからないですけど最近は笑顔が多いですよ」

 私はコクコクと首を縦に振る。見えてないのは分かってるけど。

「成仏するまで、よろしくね。友也君」
「……はい。俺はできる限りで見守っていくつもりです」
「皆も、咲香と出会ってくれて、青春を共有してくれてありがとう。本当に感謝してるわ」

 お母さんは深く深く頭を下げた。

「いえ、あたしこそ咲香ちゃんに感謝ばかりしてるので」
「俺も、いろいろ思い出をもらいました。一生忘れないです。いえ、忘れるわけがないです」

 深々とお母さんに頭を下げる三人。

「唯ちゃん、宗君。ありがとう。友也君も、改めてありがとうね」

 涙をハンカチで拭うお母さんはどこか嬉しそうだった。
 青くて広い夏らしい空を見上げ、私は溢れそうな気持ちを押さえつける。
苦しい。

 心のどこかが締め付けられて焼ける匂いがした気がした。