「村崎は、もう会話は望んでいないそうです」
「!? どうして!? 友也君」
「お母さん側に未練ができるからだそうです」
「あ……」
「でも、伝言したい言葉があるみたいです」

 スゥ、と友也が深呼吸してから続ける。

「大好きだよ。産んでくれてありがとう」

 私は、お母さんの方を向いていられなかった。

「咲香」
「以上です」
「咲香ぁ……」

 お母さんの泣きじゃくる声が聞こえる。私も涙が止まらない。
 ごめんねお母さん。
 喋ってしまえば余計に苦しくなるし、何より生き返る事とか考えるとよくわからない気持ちになるの。

 本当に、私だけが都合よく生き返っていいのかな?
 それってかなりズルいんじゃないの? 誰だって生きたい。
 でも死ぬ時は死んでる。

 人気者だった芸能人だとかスターでも、死ぬ。
 ファンが泣いても神頼みしても、死んだまま。生き返ることはない。神様も、させない。
 それなのに、私だけ。ラッキーなんてレベルじゃない。

 いいの? 本当に、アリなの?
 そう思ったら、最低限の言葉を言えるだけでも特別な気がして、長々喋るのが後ろめたくなった。