「わかってる。でもふたり分人生を楽しまなきゃって思っちゃう自分もいて。それなのに人間関係も何もかも逃げてばかりで、訳わかんない行動とったり、迷惑かけたりして。本当、自分で自分が嫌いになる。咲香ちゃん、ごめんね……」
『謝らないで、唯』

 唯は絶対悪くないんだから。
 悪いのは犯人だけだよ。他の人は誰もが被害者だ。だから、どうか謝らないで。

「咲香はお前謝ってほしくないってよ、唯」
「でも、宗……あたしに出来る事もないってわかってるけど、やっぱり咲香ちゃんの事がいつだってチラついて、悩んじゃうんだよ。あの駅に行かなければ、ここに咲香ちゃんが笑って側にいたんじゃ? とか、ずっとバカみたいに考えちゃうんだよ」
「それは皆同じだ、唯」
「……宗」

 淡々と宗は続ける。

「あの日がなければって皆ずっと思ってる。でも過去を変えられはしないんだ。あれから二年間過ごしてきたんだから、もうわかってるだろう」
「わかってるよ、でも、でも」

 上擦った声で唯。もう完全に泣いている。

「唯。過去に囚われてる方が咲香が嫌だろう」
「そう、かも、だけど」

 私だって、わかってる。何百回何千回考えても、どんなに何かを犠牲にして治っても、普通は過去は変わらないんだって、わかってる。私みたいに神様が味方になるのなんか稀だ。普通はありえない。