「けど、そんな事ばかり後ろ向きに考えていたら、助けてもらった側として最低だから、考えないようにしてる」
『……宗』

 そんな事、思ってたんだ。ふたりとも。

「オレだって色々考えたよ。あの時何かできてたんじゃないかって」
『友也』
「オレも夢を見るよ、かわりに自分が殺される夢ばかり。そうしてオレが幽霊になって生きてる村崎をボンヤリと見てるんだ」
「友也もか。俺も見たなそういう夢。そして俺の事で夢の中で咲香は泣くんだ」

 宗が切ない顔をして言った。宗も夢、見たんだ……。

「だよな。お前らは特に親友だしな。大事な親友が目の前で殺されて、後悔しない奴なんかいるかよ。気にするなともいえねぇし。宮島だけじゃねぇよ」
「柴沢……あのね。あたし、この世に生き残してもらって、咲香ちゃんに本気で感謝はしてるの。正直本当に死なないで済んで良かったって思ってるの、そこは嬉しい気持ちの方が強いの」
「ああ、オレもわかるよ。その気持ち」
「でも、それなのに粗末に生きてる感じで、咲香ちゃんにごめんねって気持ちでいっぱいになるの」

 唯が泣きながら言った。友也がそっと唯を励ますように撫でる

「普通に生きてればいいんじゃないか。当たり前の日常の重みは、あいつなら理解できるだろう」

 私は無言で頷く。

 そうだよ。唯。そんな奇抜だったり勇敢な人生だけが素晴らしいわけじゃないんだよ。
 普通に、遊んで、笑って、寝て起きて。
 それだけで人生は尊いんだよ? 
 それもまた、声にならない。声にしても、唯には直接は聞こえないけど……。