「わかったよ。じゃ。また家に顔出すから。ちゃんと三食栄養面考えて食べろよ? 湯煎にもつかるように。夜更かしもするな。じゃ」
「おう、幸二郎。またな」
「気をつけて帰れよー! 兄貴」

 そう言って、幸二郎君は友達と一緒に本屋から出ていった。幸二郎君とがにすぐに勉強の話題を友達と始めた。私には意味がわからないレベルの単語が飛んでいる。小学生なのに。怖。
 分厚くて大きなエコバッグの中には、重そうで難しそうな名前の参考書がいっぱい入っていた。はあ。やばい。この子、できる子だ……。
 私、目眩がする。眩しいー。

「はいはい。いつもありがとう、幸二郎」

 ボソリと宗はつぶやいた。その声は気弱でどこか寂しげだ。

『宗……』

 私はそんな宗の切なげな後ろ姿をぼんやり見つめていた。
 宗は幸二郎君が本屋から見えなくなると私をみてため息を吐いて笑った。

「アレが弟の幸二郎。サッカー少年だったのに、俺がやばいから勉強に本気出して今ああなってる優秀な弟。本―当に嫌になるぜ……俺のせいで人生めちゃくちゃにしたのに恨み言も言わないいい子で、逆に困る」
『…………』
「あいつの小さな頃の夢はサッカー選手。今も体育だけでもサッカー大好きで最強らしいのに、大好きなサッカーもせずに俺の代わりに勉強させて心苦しくて胃が痛いぐらいだ」
『でも、病気は仕方がないよ』

 好きでなる人なんか誰もいないんだから。