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「この雑誌とかどうだ? 咲香の好きな服が載ってる。ここのブランドの服良く着てただろ」

 本当だ。私がお小遣い貯めてよく買ってたブランドの服が特集されてる!
 付録にそのブランドコラボのコスメもついて来るみたい。いいなー、来てたら絶対買ってるやつだ。

『あー可愛い。覚えてくれてたんだ? 嬉しい。でも、いいよ。ふたりで見れるやつで。それかいっそ宗向けのファッション雑誌にしてよ。で買って着てみてよ』

 この雑誌じゃ、コスメも使えないし……。

「なるほど、そういうのもありだな。CD付きの雑誌とかは? 音楽なら聞けるだろ」
『いいね。それなら楽しいかも』

 本屋にて。ヒソヒソ声で会話しながら私達は本を漁っていた。ファッション雑誌に芸能雑誌に占い雑誌まで。色々。
 さっきまでとは違い、本屋で騒ぐのはという配慮もあって、かなり声は小さい。
 暗めの茶色をベースにした落ち着いた雰囲気の広い店内は、色んな音楽も流れてるし、独り言を聞かれたところで別に問題ないのかもしれないけど。

 それに、中にある洋風のカフェで、若い男女が中心にワイワイ喋ってるし、尚更低めの宗の声は目立たないだろう。みんな自分の会話と買い物に夢中だ。
 いいなあ。本屋のオシャレなカフェでデート。あこのケーキ食べたかったなあ。すごい美味しいって唯が言ってた。ミルクテ
ィーも絶品らしい。はあ。いつまで経ってもないものねだり。未練タッラタラ。
 本当、私って……。

 そんな風に心の中で大きなため息をついていると。