なんであの頃、あんなにも何気なく時間を無駄にしてたんだろう。バカな私。今しか出来ない事、いっぱいあったのにね。
 両親に対してだってそうだ。何も恩返しできないまま死んでしまった。
 先に死ぬなんて、むしろ最高の親不孝をしてしまった。あーあ。

『ねぇねぇ、宗』
「何だよ」
『楽しかったね』
「ああ」
『連れてきてくれてありがとう。宗』
「どういたしまして」

 宗の濡れた足跡を追いかけて、私は宗の近くを浮遊する。それと同時に私の心も浮遊する。いつまでもうこうしていたい。
 無言の中私たちは歩き続ける。通り過ぎる人々に目もくれずに、ただひたすら歩き続ける。
 少しオシャレな服屋を見つけて事情を話して、宗はおすすめの服を買わせてもらい、着替える。
 安くてカジュアルな白いTシャツにしっかりとした素材のチノパン。靴が夏らしいシンプルな黒いサンダルに変えた。
 うーん。カッコいい。

「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ、助かりました。ありがとうございます。また近くに来たら来ます」

 宗の言葉に店主は笑顔を返してくれたので、服屋を出る。はあ。結構時間経っちゃったなあ。
 そういえば、お昼。お弁当は持って来てないはずだ。