「人間なんかコンプレックスを持ってて当たり前って言うけど、やっぱ自分ではそればかり目に付くよな」
『そうだね。他人を見たら、いいところの方がぱっと目について、つい嫉妬しちゃったりするのに』

 例えば唯とか、可愛い所ばかりが目に付くけど、本人はめんどくさいウザイ性格が嫌いだとよく自分の事を話していた。
 友也だって「だからオレは」ってぼやいてたのを覚えている。

「だからこそ、他人に好きって言われると嬉しくって舞い上がっちゃうんだろうな」
『そうだね。大好きだよ。宗』
「ここで言うか」
『むしろここで言わなきゃどこで言うの』
「俺も大好きだ。咲香」
『バカップルだね。私達』
「そうだな」
『ここでいちゃつければよかったのにね』
「……そうだな」

 そうすれば、最高の思い出がふたりで作れたのに。
 お日様をあびた沢山のひまわりに囲まれた木製のベンチの上で、肩寄せ合って一緒にソフトクリーム分け合って、甘い甘い初めてのキスをする。

 生きてれば、出来た事。
 死んだから、出来ない事。

 もう二度と、叶わない事。