直人は悔しくて悔しくて、両手で拳を握りしめていた。和美の言葉は直人の心に全部届いた。届いたけれど、それを全部受け入れたわけではない。
 直人は無意識に外へ飛び出していた。あんな仏壇の中にいる純なんて見たくない。外に出た直人は空の色の美しさに驚いた。
 …あ~、もう、こんな時間なんだ。
 真っ青だったはずの空は、濃いオレンジ色の夕焼けに変わっていた。
 純の家の庭から空を見上げると、船橋では味わえない冷たく重い橙色に染まった空気が直人の体を包み込んでくれる。
 直人はそのまま庭を突き抜けて、大きな門の前まで着た。門から見える田舎の風景は、直人の頭の中をクリアにしてくれた。車がほとんど通らない道の先には大きな広い畑が延々と続いている。変化がなくのどかな風景。
 直人はもう立っていられなかった。純はもうこの世界にはいない。その恐ろしい現実が、直人の全ての神経を破壊し全ての感情を真っ黒に塗りつぶす。直人は、門の前に座り込んで大声で泣いた。何度も何度も、純の名前を呼んだ。
 …俺の親友ならなんで勝手に死んだんだ? 純がいなくなって俺はどうすればいい?
 叫んでも叫んでも、大声で泣きわめいても、純は戻ってこない。
 …純に会いたい、もう一度、会いたい、どうすれば、純に会える? 純… 純…