和美はそんな直人を胸を痛めながら見ていた。
和美は、何度となく純に直人にここへ遊びに来てもらう事を提案した。その頃の純は、自分がどんな病気にかかっているのか、ちゃんと理解していた。分かっている中で、純が考えて決めた事だ。和美は、誰よりも負けず嫌いでプライドの高い純の性格を知っている。
…純がそう決めたのなら、それでいい。
「直ちゃん、実はね、純が決めたことなの…
もし僕が死んじゃっても、船橋の友達には誰にも知らせないでって。
私が、直ちゃんにも?って聞いたら、直人にも教えちゃダメだって…」
和美はその時の純とのやり取りを思い出し、口元が少しほころんだ。
「船橋の皆は中学校に入って楽しく学校生活を送ってるのに、僕の病気の事を知ったら、皆が悲しむだろ?
だから、わざわざ教えなくていいんだって。
知らなくていいんだよ、だって、皆の悲しむ顔を見たくないからって……
純は、小学校の卒業式を終えてすぐに東京の大きな病院に入院したの。直ちゃん達に別れを告げた後、日光に行かずにそのまま病院に行った。だから、結局、日光の中学校に通う事はなかった…
純にとっての友達は船橋の友達だけだったから、私は何度も純に色々な提案をしたんだけど、ほら、あの通り頑固でしょ?
絶対に知らせないでって譲らなかった…」