直人は足が震えその一歩が踏み出せない。
 頭の中は真っ白のはずなのに、純の笑った顔と泣きそうな顔が交互に浮かび、現実を受け止められない直人を追い詰める。直人は部屋の入り口の前で呆然と立ち尽くしていた。
 すると、誰かが直人の背中を押した。直人が振り返ると、そこには佑都が立っていた。

「佑都…
 なんで、教えてくれなかったんだ?
 なんで……」

 佑都は気丈に直人の手を引き、その部屋に直人を連れて行った。

「直人兄ちゃん…
 今日は、兄ちゃんに会いに来てくれてありがとう。
 僕達は…
 実は、この日をずっと夢見てたんだ…
 直人兄ちゃんが兄ちゃんを捜してここまで来てくれることを…」

 直人は仏壇の中で笑っている純の写真を見た。この写真には見覚えがあった。小学校の卒業アルバムに載せるために、純のデジカメで変顔をして大笑いしながら二人で撮ったものだ。この純の笑顔の先には直人がいた。

「純… 嘘だろ?
 嘘だよな……」