直人は無我夢中で駆け出した。頭の中がガンガンするし、目には涙が溜まって先が見えない。でも、すぐそこには純がいる。

「直人兄ちゃん」

 直人はその言葉を聞いてハッとして立ち止まった。目を凝らしてよく見ると、そこに立っているのは久しぶりに見る純の弟の佑都だった。直人はざわめき立つ心臓の音を必死に抑えながら、笑顔で佑都に手を振った。

「佑都か? マジで?
 デカくなったな…
 マジで純かと思ったよ」

 直人の後ろを歩いてきたすずに向かって、佑都はもう一度頭を下げた。

「直人兄ちゃん達が、今日来るのは分かってたんだ。
 ちゃんとここまで来れるか心配してた…」

 佑都はそう言うと、直人の手からすずのバックを受け取った。

「佑都、純は? いる?」

 佑都は笑顔で直人達を見て大きく頷いた。

「でも、こんな田舎まで大変だったでしょ?
 母さんが迎えに行こうかって言ってたんだけど、何時の電車か分からないから下手に動かないで待つことに決めたんだ」

 純の家は、門を入るとそこには広い庭があり自家菜園でたくさんの野菜を作っていた。
 直人は、納屋の隣に下へ降りる手作りの階段がある事に気がついた。
 …きっと、川につながっている。
 不思議と、直人の直感がそう告げていた。