直人とすずは、名前も分からない黄色い花の群生を目指して一目散に駆け出した。
丘の斜面に木々の間を這うように所狭しと咲いているその花は、陽の光に照らされて燃えるように輝いている。まるで、やっと直人とすずに会えたというような装いで、花自体は小さいけれど生き生きと爛漫に咲いていた。
そして、そんな一面に咲き誇る黄色い花を目の前にした二人は、茫然と立ち尽くした。すずはバッグの中から純からのハガキを取り出すと、そのハガキを高く掲げ純の写真と今の風景を照らし合わせてみた。
「直人、間違いなくこの場所だよ。
純は上から撮ってるけど、でも、ほら見て。写ってるこの大きな木はこの木でしょ? 緑の苔の生え具合も変わらない。ここに写ってる枝だって、あの枝と同じ形をしているもん」
すずは興奮していた。ただの偶然かもしれないけれど、純から届いたこのハガキのこの写真が二人を救ってくれた。
直人も自分に送られてきた同じハガキを手に取って見ていた。
物事が分かるようになった赤ちゃんの時から、純は近くにいて直人の親友だった。直人が泣けば純も泣く、純が笑えば直人も笑う、そんな二人の話をいつも聞かされた。
直人は、純との絆に今さらながら感動していた。
「すず、もうすぐ純に会える」
直人はすずの手を取り焦る気持ちを抑えながら、その黄色い絨毯の上を駆け上がった。