直人は戸惑っているすずを、もう一度強く抱きしめた。


「すずに答えは強要しないから。
 これは俺の問題で、俺自身のけじめなんだ。
 今から純に会いに行くこのタイミングでこんな事言って、俺って最低だよな。
 すずが純を好きなのを知ってて俺は何を言ってるんだって感じ? 
 でも、ごめん、今日、今、ここで伝えたかったんだ…」

 直人は勝手に告白して勝手に納得していた。
 すずだって、直人に伝えたい事は山ほどある。でも、今は、直人の思いがけない告白に胸が詰まって、すずは何も言えずにいた。
 直人は急に照れくさくなったのか、すずを抱きしめる腕の力を弱めた。

「直人、私も直人に伝えたい事があるの。
 それは…」

「それは、明日聞くよ…
 純との再会を果たした後に。それでいい?」

 直人は自分の臆病さにうんざりした。今聞こうが、明日聞こうが、きっと答えは同じはずだ。でも、すずとの二人きりの冒険をもう少し楽しみたい。その大切な時間だけは、絶対に手離したくなかった。フラれるのはその後でいい。
 そして、すずは静かに頷いてくれた。