直人はこの森と川の神秘的な力のせいなのか、自然と素直な言葉がスラスラと出てくる。

「俺の今までと、俺のこれからを、すずに伝えたい。
 まずは過去の俺。過去の俺は、小学校の時も中学の時も藤ケ谷すずが好きだった」

 すずは抱きしめられている直人の腕の中から顔を上げて、直人を見た。

「知ってただろ?」

 すずはいつも半信半疑だった。小学校の時も中学の時も、直人に好きだと言葉で告げられた事は一度もなかった。

「そして、これからの俺は…
 純に会う前じゃなきゃ、きっとこんな風に素直に言えないと思って。
 すずの事に関してだけは、俺はいつも純を意識してた。純もずっとすずの事が好きだっただろ?
 俺はすずの事が好きな半面、純の事を傷つけたくないって思ってたから、子供の俺の頭じゃすずへの想いを心の底に沈めるしか思いつかなかった。心に蓋をしてすずへの気持ちを閉じ込めてたんだ。
 でも、好きなものは好き。
 蓋をして閉じ込めれば閉じこめた分だけ、想いは大きくなる。
 高校を卒業してこの歳になって、やっと決着がついた。
 純とか関係ない。
 俺はすずが好きで、今でも昔と変わらすずが大好きで、この気持ちをそろそろ解放してあげようと思ったんだ」