「ほんとだ。全然違う…
 そうだよな、そんな偶然が何度も続くはずないか」

 直人は、ハガキをバッグにしまうすずを切ない気持ちで見ていた。

「すず、寒いんじゃない?
 今、すずの指先に触れたらめっちゃ冷たかった」

 直人は心配そうにずずの顔を覗きこんで、そう聞いてみる。

「ううん、大丈夫だよ。平気…」

 すずは両手で口を覆い息を吹きかける。
 すると、直人はすずの肩を自分の方に引き寄せた。右手ですずの腕をさすりながら左手ですずの頬を触ると、直人は我慢できずにすずを力強く抱きしめる。

「すず…
 風邪をひかないように、俺が温めてあげる…」

 すずもゆっくりと直人の背中に手を回した。

「じゃ、私も直人を温めてあげる…」

直人の中ですずへの想いが大きく膨れ上げる。

「すず…
 純に会う前にすずに伝えたい事があるんだ」