「すずは入っちゃダメだ。冷た過ぎるから。
 あ~、やべ~、氷水に足を浸してるみたい」

 直人はそこに突っ立ったまま大きく深呼吸した。この場所は上を見上げれば青空が見える。ちょうど川の真上は森の木々の葉っぱが途切れていた。川の水面に陽の光が反射して、川底に見える小石や砂を浮き出して見せてくれる。
 直人はその透明な水を手ですくい顔を洗った。

「最高~ 気持ちいい~」

 直人は子供のようにはしゃいだ。
 すずは川岸の岩に座り、その姿を目を細めて見ている。

「すず、純のハガキに川の風景の写真があったよね?
 もしかして、ここ?」

 すずはバッグの中から、純からの年賀状をまとめて入れているファイルを取り出した。そこには、川の景色を捉えた写真を印刷したハガキが二枚あった。その二枚のハガキを取り出し、今、すずに見えている川の風景を照らし合わせてみる。

「ここじゃない…と思う。もっと川幅があるし、周りに苔がついている岩がたくさんある」

 直人は川から上がって靴下と靴を履いている。そして、すずの隣に座った。