やっと二人は、茂みから川につながる小さな道にたどり着いた。直人は獣道を想像していたけれど、地元の人達がよく使っているせいかその道は手入れがされていてとても歩きやすい。
そして、あの店の女性が話していたように、そこはまるで木々に囲まれた小さなトンネルのようだった。
「すず、その真ん中に立ってみて」
直人は、すずをその木漏れ日が零れる一番綺麗な場所に立たせた。
「直人も来て。一緒に撮ろうよ」
すずはこの旅行の記念写真が欲しかった。それには絶対直人とのツーショット写真がいいに決まってる。
直人はバッグとリュックを足元に置いて、すずに頬を寄せてスマホを高々と持ち上げた。
「ちゃんと森の感じも映ってる?
ほら、すず、笑って」
すずは直人の頬がくすぐったくて本気で笑ってしまった。そして、そんなすずを見て直人も笑った。
「なんか、めっちゃいい写真が撮れたよ。
すず、笑い過ぎだし。でも、すげー可愛い」
すずも直人のスマホを一緒に覗きこんだ。
「直人だって、結構、笑ってるじゃん。
あ~、でも、緑色の木々に陽ざしのキラキラが反射して本当に綺麗…
私にもすぐに送ってね」
二人とも、この何気ないひと時がこんなに素晴らしく感じられるのは、純のおかげだと思っていた。純に会いに行くこの旅は、都会では絶対に気づかない何かを気づかせてくれる。