「ありがとうございます」

 直人とすずはまた一緒に頭を下げた。

「バスでここまで来たのかい?
 それならそのバスが向かって行った方向をしばらく歩くと、茂みが途絶える場所が出てくるんだ。
 ちょうど森の中にあるトンネルのような小さな道が続いてるからすぐ分かるよ。
 そして、そこを道なりに歩いて行けば川にぶち当たる。そこは川幅が狭い場所だから、木製の小さな橋がかかってる。そこを渡ってまた道なりに行けば、今度は道が二手に分かれる所があるんだ。
 そこまで歩くと大体の人が方向感覚を失って、どっちに行けばいいのか分からなくなる」

 直人は必死にその女性の話を頭に入れ込んでいた。反対に、すずはノートを取り出し、言われた事柄をすばやくメモしている。

「それで?」

 直人は先を急いで女性にそう聞いた。

「いいかい、迷ったと思ったら上を見上げる事。
 川沿いの歩道はかなり下の方にあるんだ。
その二手に分かれた道で上を見上げたら、行かなきゃならない道の上の方に黄色い花がたくさん咲いているはず。その黄色い花の方へ歩いて行けば、向こう側の集落に続く道が見えてくるよ」