しばらく待っても誰も出てくる気配はない。
「すみませ~~ん」
直人はもう一度大きな声でそう言った。しばらくして奥で引き戸を開ける音がすると、七十歳位の白髪交じりの女性が出てきた。
「は~い、すみませんね~、今、ろくな物は売ってないよ」
その女性は直人とすずを見て半分驚いたようにそう言った。
「いえ、違うんです。
今、僕達は友達の家を探してて…
もし知っていたら、そこへ行く近道を教えてもらえればと思いまして」
直人は慌てて純の家の住所を書いたメモを取り出した。
「私が知ってればいいけどね~」
その女性はそう言いながら、老眼鏡をかけてそのメモをゆっくりと見た。
「あ~、その友達の家は、そこに小さな川があるんだけどその川を挟んだ向こう側だよ。
車で行くなら、その大きな道を真っ直ぐ行けば川を渡る橋があるんだけど…
歩きかい?」
直人とすずは二人一緒に頷いた。
「今日は天気もいいし、子供じゃなさそうだから、地元の人が行く近道を教えてあげよう」