直人とすずが降りたバス停の周辺は、人も車もほとんど見当たらない寂しい場所だった。静けさの中、小鳥達の声だけが大きく聞こえている。
「ヤべェな…
このバス停に着いたら、とりあえず誰かに聞こうって思ってたんだけど」
直人は途方に暮れた。地図通りに行く事はできるけれど、もし近道があればと考えていた。地図通りに進むとかなり遠回りをすることになる。直人はこの森の中を直線で突っ切れば、純の家まで行けると考えていた。
「直人、この道の向こうになんかお店が見えるよ。
ほら、看板だよね? あの赤いやつ」
直人がすずの見ている方向に目をやると、確かに看板らしき物が見えた。
「すず、あそこまで歩ける?」
「うん、大丈夫」
直人はすずの手を引いて赤い看板のある店まで歩き出した。きっと、もう、純の家はそこまで来ている。
その店は半分はシャッターが閉まっていた。でも、直人が中を覗くと、奥の方に人のいる気配がする。
「すみませ~~ん」