直人はそれでも後ろから目が離せない。
「そうかな…」
「そうだよ。自転車かなんかで家に帰ってるって。
あ、それか最寄りのバス停で待っててくれてるかも」
すずは興奮して声がうわずっている。
「でも、それはないと思う。バスより早いはずはないし」
「じゃ、やっぱり家に向かってるって」
直人は渋々納得した。直人達の旅は計画通り純の家を目指すだけだ。
「そうだよな…
ここで俺達が引き返しても純に会えるとは限らないし、時間だけ余計にかかっちゃうだけだもんな」
すずは直人を見て大きく首を縦に振った。大丈夫、必ず純に会えるからと直人に目で訴えている。
直人はすずの横で静かに目を閉じた。心の中はまだ動揺している。だって、六年ぶりに純を見たのだからしょうがない。直人は胸が詰まって涙がこみ上げてきた。でも、すずの前で泣くわけにはいかない。
直人は向こうの座席に忘れ物を取りに行くふりをして、全開にしたままの窓を思い切り閉めた。すずを背にした途端、直人の頬に一筋の涙が落ちてきた。
…純、会いたかった、本当に会いたかった。