直人ははやる気持ちを抑えられない。眠っているすずの隣の席に移り、すずを起こそうかどうか悩んだ。そう考えている間も、純の事が気になってしょうがない。

「すず、すず、起きて」

 直人は一人で旅をしているわけではない。でも、正直な気持ちは、今すぐにでもバスを降りて純のいる方向へ走って行きたかった。
 すずは寝ぼけまなこで目を覚ました。

「ごめん、また寝てた… もう着く?」

「いや、停留所は次の次なんだけど…
 すず、純が俺達を捜してくれてた。さっき、道ばたに純が立ってたんだ。
 多分、このバスに俺達が乗ってるって分かってるみたいだった」

 すずは直人のその言葉で完全に目を覚ました。

「純がいたの?」

「うん、あれは絶対純だった。
 すず、どうしよう。俺的には今すぐにでもその純が立ってた場所に行きたいんだ」

 直人はそう言いながらもずっと後ろを気にしている。すずも一緒に後ろを振り返って見た。

「でも、きっと、純も移動してるよ。
 私達がこのバスに乗ってるのを確認したのなら、先回りして家に向かってるって」