直人は思い出したらまた吐きそうになってきた。

「すず、もうこの話はやめよう…」

 直人は通路を挟んだ隣の席に移動した。窓側に座り、窓を全開にした。

「寒くなったら言ってね」

 直人がそう言うと、すずはまだ面白そうに笑っている。
 直人は窓からの風を浴びながら、外の景色を眺めた。いつの間にか街の風景は終わり、鬱蒼とした森の風景に変わっている。直人は、そんな森の中から差し込む木漏れ日の美しさに目を奪われていた。
 すると、あの修学旅行の時に純と一緒に体験した、森の中の不思議な光景を思い出した。

 “俺達に見えている美しくハッとする何かには、誰かの魂が宿ってるんだ。
 この場所はそういうところ……
 死んでしまった魂は誰かに気づいてもらいたくて、美しい物に形を変える”

 直人はぼんやりとあの時の純の言葉を思い出した。でも、今なら分かる。ここに来ている魂は純粋で優しい魂が多いのだろう。だから、見ている人に癒しや穏やかな気持ちを与えてくれる。

 “ここはそういう場所なんだ…”