「俺達が子供の頃、船橋はたまに光化学スモッグ警報が出るくらい空気がヤバかった」
すずはクスッと笑った。
あの頃、よくその光化学スモッグ警報のために、外での楽しい遊びを中断しなければならなかった。直人と純はそれでも外で遊んでいて、先生にしょっちゅう怒られた。
「確かに純の言う通り、こんな場所におじいちゃんの家があったらそりゃ大好きになるわ」
直人は外からの冷たい空気を肌に浴びながら、あの時の純の話を思い出していた。
「純は、もう、きっと、ここの人間になってるって事だよ」
直人は踏ん切りをつける意味でそう言った。すると、隣に座っているすずは少しふさぎ込んだ顔をしている。
「もし、純がいなかったり迷惑そうだったりしたら、あのタイムカプセルの手紙を渡したらそのまま帰ろう。
まだ、分かんないけどさ、最悪な場合も考えとかないと…」
「うん…」
直人はすずの小さな手のひらを優しく自分の手で包み込んだ。直人は、この旅の間に、できれば純に会う前に、必ずすずに告白する。色々なしがらみはこの際全部捨てる。
…今言わなきゃ、いつ言うんだ?