直人はスマホの中の地図を拡大して見てみる。

「グーグルマップで見て大体は分かってるんだけど、紙の地図もあった方がいいかと思って」

 直人はそう言うと、リュックの中から日光の地図を取り出した。そして、すずにこれから二人が行く道筋を指でたどって教える。純の家は最寄りのバス停からかなり離れていた。

「このバス停から純の家って、結構離れてるんだ。迷わないようにするけど、でも、一体どれくらい歩く事になるのかさっぱり分からない」

 すずは直人が一緒にいれば何も不安はなかった。

「私は大丈夫。直人の足手まといにならないように頑張るから」

 すずはそう言って、直人を安心させた。
 直人は何度も地図を見て、バス停から純の家までの目印を頭に入れている。
 すずは最後の一口になった肉まんを口に放り込んだ。

「直人、私はいつでも出発できるよ」

 直人は地図をリュックにしまうと、さりげなくすずの頬に触れた。

「何があってもすずの事はちゃんと俺が守るから」

「え、何がありそうなの?」

 すずは少し不安を感じながら直人に聞いてみる。

「何って……
 たとえば、クマに会うとか」

「え~ 嫌だ~ こわいよ…」

本気で怖がっているすずを見て、直人は半笑いをした。

「だから俺がちゃんと守るって言ってるじゃん…
 でも、その前にクマはまだ冬眠してると思う。寝ててほしいけど」