直人はすずの顔を見て静かに微笑んだ。
「よっしゃ、さっさと食べて出発しようか?
純がそっけなかったり、昔と変わってたとしても、それはそれで受け入れなきゃな。
でも、大丈夫…
すずの事はきっと覚えてるから」
すずは急に立ち上がり、駅の周りを見回した。行き交う人々の顔を凝視している。
「すず、どうしたの?」
直人も一緒に立ち上がった。
「もしかしたら、純が来てくれてるかもしれないと思って。
私達がここに座ってたら気付かないかもしれないでしょ…」
直人はそんなすずの肩に手をのせて、またベンチに座らせた。
「すず、いいから、まずは早く食べて出かけよう
もし純が来てくれてて行き違いになったとしても、それは後で笑って話せるだろ?
俺達はとにかく先に進まなきゃ……
純の家はこの駅から結構離れてるし、今からバスに乗って、そしてそのバス停からまた歩かなきゃならない。だから、すずもその買った肉まんを早く食べなきゃ」
すずは直人の言葉を信じた。
純は直人とすずを迎えに来てくれた。でも、行き違いになって会えなかった。すずは自分の心にそう言い聞かせた。そうしないと純に会う事をためらってしまう自分がいる。