すずは、自分にもそう言い聞かせている。
 でも、すずも直人も知っている。負けず嫌いで自分勝手な純だけど、すずと直人の言う事だけはいつも素直に聞いてくれた。だから、きっと、多分、純が迎えに来てくれるかもしれないと期待していた。

「純は…
 俺達にもう会いたくないんじゃないかな…」

「………」

「ま、いいか、それならそれで…
 会えなかった六年の間に色々な事があってもそれはしょうがないもんな。
 俺達は残された立場で、純がいなくなって寂しくて辛くてしょうがなかったけど、純には新しい未来が待ってたんだ。環境も友達も船橋の生活とは全く違う世界が……
 純も俺達と同じ気持ちでいるって思ってるところが、きっと思い上がりなのかもしれない」

 すずは何も言えなかった。
 朝からずっと二人で純の話をして盛り上がった。でも、それは十二歳の頃の純の話だ。今の純の事を、すずも直人も何も知らない。