二人は電車を降りた途端、気温の違いに驚いた。天気は良くまだ昼の真っ只中だというのに冬を思わせるような寒さだ。

「すず、マフラーとか持って来た?」

 すずはきょとんとした顔をして首を横に振った。
 直人はすずの首元が開いてるのがすごく気になっていた。今からもっと山の奥の方へ行く予定なのに、すずのこの恰好じゃ寒すぎる。直人はリュックの中から自分用のネックウォーマーを取り出した。

「すず、これ…
 その恰好には似合わないかもしれないけど、風邪ひくよりはいいからさ」

 すずはそのネックウォーマーを受け取った。

「一応、ちゃんと洗濯してあるから大丈夫だと思う」

 すずはすぐにそのネックウォーマーを首につけた。

「あったかい…
 直人、ありがとう。でも直人は?
 あ、そうか、私が温かくなったらすぐに返せばいいね」


 直人はすずの荷物を軽々と持ち上げながら微笑んだ。

「サッカーで寒さには慣れてるから、俺は大丈夫。雪の中だって普通にやるんだから。
 それよりすずが風邪をひく方が俺は嫌だ…」