すずも直人の肩にもたれて目を閉じた。日光が近づいているのは、肌に触れるひんやりとする空気で分かる。
すずはこの旅で、自分の固くなり過ぎた分厚い殻を壊したいと思っていた。この殻を壊さない限り、本当に好きな人に好きと言えない。すずは隣で寝息をたてている直人の横顔を見て、もう一度心に誓った。
…今日で私は変わる
直人は到着地の日光駅の手前でようやく目覚めた。
「すず、起きて。次で降りなきゃ」
すずもいつの間にか眠っていた。昨夜寝ていないせいで深い眠りに落ちていた。
直人はそんなすずの肩をギュッと自分の方に引き寄せた。可愛らしい寝顔を飽きるほど見ていたい。すずの規則正しい寝息に、直人の保護本能はムズムズと動き出す。
「すず、起きて。マジで着きそうだからさ」
すずはびっくりして目を覚ました。
「ごめん、寝てた…」
「うん、分かってる。
歩ける? おぶってもいいけど」
「歩けるよ…」
直人はすずのバックを担ぎ、手を差し出した。
「俺がすずのためなら何でもするの知ってるくせに」
「そんなの知らない」
「じゃ、今から教えてやる」