直人はすずの質問にどう答えていいか悩んでいた。正直に答えれば、それは愛の告白になってしまう。
…すずの本当に好きな人は?
一瞬、その問いが頭に浮かんだ途端、車窓から見える青空に純の顔が浮かんで見えた。
「そっか、そうだよな…
今からすずの本当に好きな人に会いに行くんだった」
直人はすずへの告白を考えている自分が滑稽に思えた。
でも、それ以上に、純が船橋を離れている六年の間になんですずに自分の気持ちを伝えなかったのかと、今さらながら後悔をしている。
今から純に会いに行く。そんな中、直人がすずに告白するなんてあり得ない。すずは純が好きで、純はすずが好き。それは、
子供の頃から言われなくても分かっている。
直人はもう考えるのをやめた。直人がすずを好きな気持ちは隠しようがないくらい本当の気持ちだ。その気持ちに対しては正直でありたいと、今はそう思っている。
「せっかく純に会いに行くんだからさ、この話はやめようよ。すずが純を好きなのは、それはちゃんと分かってる。
でも、俺が誰を好きかなんてすずにも純にも関係ないことじゃん。だから、そっとしておいてよ」