「高校の時は、彼女はいた。 
 でも、今はいない」

 すずは自分から聞いた事なのに、胸の中が苦しくなる。

「ど、どんな彼女だったの?」

 すずは心とは裏腹に勝手に口が動き出す。直人は大きくため息をついて、もう一度意地悪な顔ですずの顔を覗きこんだ。顔をしかめて、本当に聞きたいの?と目で訴えている。それでも、すずは表情を変えずに直人の答えを待った。

「すずとは真逆なタイプの女の子。
 活発で男にも負けないくらいに口が悪くて、ちょっと怖かった」

 すずは驚いて直人の方を見た。

「直人の好みってそんな女の人なの?」

 直人は笑いたいのを堪えてるような、そんな顔をしている。

「俺は別にその女の子を好きでも嫌いでもなかったんだ。どうしてもつき合ってって言われたからつき合っただけ。だから俺の好みは全然違う」

 すずは直人の腕を思い切りつねった。

「いてっ」

「直人、最低…
そんな風に女の子とつき合える人だったんだ…」