「ねえ、直人、あの時の色別リレーは鳥肌立ったよね」

 すずはあの日の純を思い出していた。

「赤組は低学年の子が転んじゃって、六年の選手にバトンが渡るまでビリの方に固まっててさ」

 直人も、今すずと同じ場面を思い出している。

「純は足の具合が悪くてほとんど練習もできないでいたから、色別リレーの優勝トロフィはもうダメだってみんな思ってたのに」

 すずは思い出の中の純の姿に興奮しウットリしている。

「アンカーの六年の男子は全員足が速い子ばかりだったのに、それ以上に、純はめちゃくちゃ速かったんだよね」

 直人も微笑んでいる。あの時の色別リレーは、団長として応援していた直人も鳥肌が立った。

「六年の男子だけは校庭一周を走らなきゃならなかったから、純は四人を一気に追い抜けた。そして、最後の一人はゴールの直前で抜いた」

「純はもう一人のヒーローだった。
 リレーしか出なかったのに、皆の記憶にしっかりと残ってるから」