直人は純の隣に立って同じように頭を下げた。
「純の母さんが何て言うかだ。純の方からも母さんに頼んでみろ。そこで許可が下りれば、俺は何も言わない」
純は大きな声で「ありがとうございます」と言った。
それから運動会までの日々は、純と直人の二人三脚で準備を進めていった。子供の頃から一緒に育ったも同然の二人は、お互いで無いものを補いながら応援団に全てを注ぎ込んだ。
直人は、大人になった今でも、目を閉じれば鮮明に思い出す。
運動会を通して、二人は本当の意味で親友になった。ただの幼なじみの枠を超えて、魂を分かち合えるほどの絆ができた。
それなのに、直人は、裏方に徹する純に遠慮して何度も純を怒らせた。
「中途半端な優しさが、俺をどれだけ傷つけるのか分かるか?」
それ以来、直人は団長として自分を奮い立たせリーダーシップを色々な場所で発揮した。そして、そんな直人を純は目を細めて見ていた。
人前に出ることが苦手だった直人が一皮むけた。純は歯がゆい思いを抱えながら、それでも直人のためにしっかりと準備をしてくれた。