純はそれでも直人を見なかった。窓の近くで握りしめた拳をずっと見ている。
「直人、ほんとごめん…」
純は悔しさがこみ上がる。夢にまで見た応援団長を諦める事は簡単な事ではない。でも大好きな直人が代わりを務めてくれるのなら、陰ながら直人の力になろうと決めていた。親友のために直人が大きな決断をしてくれた意味をしっかりと受け止めたい。
「先生、一つだけお願いがあるんですけど…」
泣き顔の純に勝気な瞳が戻ってきた。
「なんだ?」
「最後の色別リレーだけは出させてください」
「無理だって言ってるだろ」
もう純の顔に何の迷いもない。
「最後の小学校の運動会なのに、何も思い出が残せないなんて絶対嫌だ。
応援団も徒競走も組体操も我慢するから、最後のリレーには出させて下さい」
純は先生に向かって頭を下げた。
「先生、俺だって嫌な団長を引き受けたんだ。
だから、純の願いを叶えてやってよ。俺からもお願いします」