「勝手に決めんなよ」

 直人は今度ばかりは譲れないと思った。純は団長の仕事は簡単にできるかもしれないけれど、直人にとっての団長なんてストレス以外の何物でもない。

「先生、直人がやらないんだったら俺やりますから。別にこの先走れなくなってもいいし」

「純、それはだめだ。
今で膝の靭帯が半分切れかかっているんだから。前十字の靭帯がパックリ切れたら手術だぞ」

 純は半分泣きそうな顔をしている。直人は純の辛い気持ちは誰よりもよく分かっている。目立ちがり屋で負けず嫌いで頑張り屋の純が運動会に出れないという事実は、親友の直人の胸までもえぐった。

「純、今から先生が直人と話をしてみるから、お前は先に戻っていい」

 純は窓枠を何度も拳で叩いた。悔しくてたまらないと純の表情が訴えている。

「分かったよ…」

 直人はそう言いながら、大きなため息をついた。
 
「俺が純の代わりをすればいいんだろ?
 でも、その代わり、純にはずっと俺についててもらうからな。
 団長の仕事でできないものだけを俺がやる。
 それ以外はやらない。
 皆をまとめたりとか、振り付けを考えたりとか、それは純の仕事だろ?
 俺はやらないから」