「何だよ、急に…」
「だって話してないと眠くなっちゃうんだもん。直人の話を聞きたい」
眠たいのを必死に我慢しているすずの目はトロンとしてものすごく可愛らしい。すずの全てが直人の思考回路を破滅していく。でも、直人は冷静に振舞う事に集中した。そうしないと、この旅行は危険すぎる。
「俺は、やっぱり最後の運動会かな…」
「直人が応援団長をしたんだよね」
「うん…
でも、本当は純がするはずだった。俺は団長なんて考えてもなかったし」
直人とすずの頭の中には六年生最後の運動会の映像が流れている。
「でも、直人が純の代わりに団長を引き受けてくれて、あの運動会は圧倒的大差で赤組が勝った。すごく盛り上がったし、最高に楽しかったよね」
あの時の直人はみんなのヒーローだった。でも、本当ならそれは純のはずだった。