しばらく二人は黙って座っていた。でも、直人はその間も色々な事をずっと考えていた。
 …すずは俺の匂いを大好きな匂いって言った。俺の匂いはお日様の匂いで純の匂いは風の匂い? そもそも風って匂いなんかあるのか? お日様の匂いってのも全然分かんないけど、すずが大好きって言ってくれただけで俺は嬉しい。
 直人はニヤニヤしながら外を見ていると、突然、すずが直人の肩に頭をくっつけてきた。すずは眠そうな目をしながら何回もまばたきをしている。

「すず、眠たかったら寝ていいよ」

「いや」

「まだ相当時間かかるから、今の内に寝といた方が」

「大丈夫だから…
 せっかく直人と二人で旅行してるのに、時間がもったいない…」

 直人の胸がはち切れそうだった。もし周りに誰もいなかったら、思いっきり抱きしめた。こんな風に直人のすずへの想いはどんどん膨らんでいく。

「直人、小学校の時に一番記憶に残ってる事って何?」