すずは早歩きでお土産品や小物の雑貨などが売っているフロアへ向かう。直人はそんなすずの後ろをついて歩く。すずはスマホの時間を気にしながら色々な店を見て回った。

「直人、これは?」

 そこはアンティーク調の雑貨を取り扱っているお洒落な店だった。すずはシルバーのアルファベットがぶら下がっているキーホルダーを手に取ってみる。

「直人のNと純のJを一緒にぶら下げると、ほら…
ただのキーホルダーがこれだけで大切な意味を持って世界で一つの物になる」

「すずのSは?」

 すずは驚いた顔で直人を見た。

「私は、いいよ…
 だって、男同士の友情の物にしたいから」

 直人はSのキーホルダーを手に取りすずに渡した。

「俺は嫌だ。きっと純だってそう言うよ。真ん中にすずを入れなきゃ、俺が純に怒られるよ。
 ほら、3つのアルファベットが並んだら、もっと希少な物になる」

 NとJの間にSが揺れている。
 すずはずっと心の中にしまっている思いを、もう一度、心の奥にしまい込んだ。