「他に用事がある?」
直人はすずの顔を覗きこんで聞いてみた。
「あんまり時間をかけないから、ちょっとだけ買い物がしたい」
「買い物?」
直人は中学も高校もサッカーにばかり打ち込んだ日々だった。高校になるとたまの休みには女の子とデートをしたりもしたが、女の子が直人に合わせてくれるそんな関係だった。はっきり言うと、こんなすずのような純粋で女の子らしい女の子とはつき合った事がない。
「純にね……
お土産というか、プレゼントを買いたいんだ」
「あ、純に?
手ぶらってやっぱりまずいかな?」
ずずは静かに首を振り、飲み終えた容器を持って立ち上がった。
「直人も一緒に選んでほしい。
小六の時に純の誕生日プレゼントを一緒に選んだみたいに」
直人も一緒に立ち上がった。
直人にすずの気持ちは分からない。でも、小学生の頃のまま、全てが止まっているのだと思う。直人は、大人になってしまった自分が何となく悲しかった。