直人はもうすでに遠くにすずが見えていた。直人には珍しく、かなり早くに着いたと思っていたのに、もうすずは待ち合わせの場所に立っている。
直人は澄ました顔ですずに近づいた。興奮で心がいっぱいになっている事を悟られたくなかったし、冷静でいないとすずに何を言ってしまうか分からない。
「すず、どうしたの? めっちゃ、早いじゃん」
長い髪をてっぺんでおだんごにしているすずは本当に可愛かった。それにすずは、直人の忠告をちゃんと聞いて動きやすい恰好をしている。薄手のショート丈の白のダッフルコートにデニムのパンツが、すずの雰囲気にとてもよくマッチしていた。
「直人、おはよう。
なんだか興奮しちゃって早くに目が覚めちゃった。
今日、純に会えるんだよね?
あ~、何だか夢みたい…」
直人はそんなずずを複雑な思いで見ている。
純に会いに行くという神聖な計画の脇で、すずと二人っきりという最高なシチュエーションに大人の男としての欲望が前に出たいと騒いでいる。