約束をした土曜日の朝は快晴だった。
直人は天気予報で日光方面の天気を確かめ、リュックに簡単な着替えを詰め込んだ。とりあえず、駅前にある小さなビジネスホテルを予約した。値段が一番安いホテルにしたため、どんな所かは行ってみないと分からない。もしかしたら純も一緒に泊まると言い出すかもしれないと思い、直人は三人で泊れるトリプルルームを予約した。
「じゃ、母さん、行ってくるね」
直人がそう言って玄関に立つと、二階から妹のいおりがドタドタ降りてきた。
「お兄ちゃん、これ」
いおりは直人に手紙を差し出した。
「何これ?」
「佑都に手紙を書いたの」
直人と純が幼なじみのように、妹のいおりと純の弟の佑都もとても仲が良かった。
「お兄ちゃん、スマホで佑都の写真を忘れないで撮ってきてね」
「じゃ、佑都にいおりのすっげーブスの写真見せとくから」
「もう、直人の意地悪。そんな事したら一生許さないからね」
直人はいおりにベーと舌を出して、思いきりドアを開けた。