直人は、本当の意味で純としっかり向き合おうと心に誓っていた。純は、きっと純のままだ。それだけは直人ははっきりと分かっていた。
 小学六年生の時、直人と純は所属していたサッカーチームから、隣町にあるプロチームの下部組織のトレセンへの参加を勧められた。その厳しいセレクションに勝ち残ればプロサッカーチームのユースに入る事ができる。
 直人はMFで純はFWだった。二人で絶対に残ろうと約束したのに、純は四次の選抜試験を辞退した。きっと、日光への引っ越しが分かったのだろう。

「俺のためにも、絶対ユースに残れ」

 純はタオルで顔を隠し、泣きながら直人にそう言った。直人はその言葉だけを糧にして、その先のトレセンに励んだ。そして、ユースに入れた時も、純は自分のように喜んでくれた。
 直人は、直人の進む道の道標になっている純の存在から、もう卒業したいと思っていた。いつもどこかで純に負けたくないと思っている自分がいる。
 でも、直人はやっぱり純の存在を気にしてしまう。純は純の好きなように自分の道を進んでいる。だから直人も誰にも気兼ねせずに自分の思う道へ進みたい。
 まずは、すずに告白をする。純の気持ちなんてもうどうでもいいと、直人は心に言い聞かせた。