“純へ

お元気ですか?
この間、久しぶりに6年2組のみんなと会ったよ
でも、純がいなかったからすごく寂しかったです
みんなの代表で直人と私で純に会いに行きます
無事に純の家にたどり着けることを祈っててね

藤ケ谷すず”

 すずはそう書き終えると、便せんの余白にイラストを描き始めた。
 すずは、小さい時から漫画を描くことが大好きだった。そして、そんなすずの描くつたない漫画をいつも純はほめてくれた。全く絵心のない純は、すぐにすずにイラストを描いてとねだった。すずの描く単純な絵を、純は大好きだと言ってくれた。そんな純の喜ぶ顔が見たくて、すずは毎日漫画を描いて練習した。
 今のすずの夢はイラストレーターになることだ。その夢に向かって美大に入る事ができたのも、それもこれも全部、純がすずの絵を褒めてくれたからだと感謝している。
 その便せんの余白に書いたすずの絵は、大野組のメンバーがせんだんの木の下で手をつないでいる絵だ。みんなが笑顔でまだ十二歳の子どものままの可愛らしいイラストは、きっと、優しいメッセージを含んでいる。