直人は、あの薄暗い森の小道を堂々と歩いている純の後ろ姿を思い出していた。
「純がさ、今、直人の頬を冷たい風が吹いただろ? それも誰かの魂なんだとか、森の中に一筋の光が見えるだろ? あれも誰かの魂かもよとか、なんとなくキラキラして見えるものは何かしら誰かの魂を宿してるとかさ。
ただでさえビビってる俺は、純の話す不気味な話でマジで帰りたかった。
もしクマに出くわしたら、そのクマだって何かの魂をって言うから、俺がクマは生きてるから自分の魂だろ?って言ったら、クマに出くわしたら俺らは魂が抜けたように死んだふりをしようって、純が笑って言ったのを覚えてるよ」
すずの微笑みが何だか大人びて見える。
「とにかく純は日光が大好きだって言ってた。
だから、引っ越しが決まった時も嬉しそうな顔をしてたよな? あいつ…」
すずはもう一度優しく微笑んだ。
「でも、その後に大きなおちがあるんだよね?」
すずは直人に言ってもらいたくてうずうずしている。
「そう…
結局、その店は閉まっててレモン牛乳は買えずに帰ってきたら」
直人とすずは、お互い顔を見合わせてプッと吹き出した。
「なんと、純のじいちゃんがクラス分のレモン牛乳を買ってきてたんだ」