すずは、そのまま直人の肩にもたれて寝てしまった。
 すずだって、きっと、この二日間、尽力し、努力したに違いない。
 疲れて眠るその顔は、本当に可愛くて愛おしい。

 直人は、純からの手紙が気になってしょうがなかった。
 和美は楽しみは後にとっておくと言っていたけれど、直人にはそんな辛抱強さはない。
 リュックの中に手を入れて、純からの手紙を探した。大切にスケジュール帳に挟んでいたため、すぐに分かった。青い封筒を出した途端、直人は手が震えた。心臓が高鳴るのが分かる。
 まるで待ち合わせをして久しぶりに純に会うような、そんな気分だった。
 直人は丁寧に封を切り、中のカードを出してみた。
 それは写真だった。
 そして、その風景には見覚えがある。
 純の部屋から見たあの森の景色だ。
 写真の日付には七月とある。
 でも、この写真に映っているあの森は、昨日見た春の森とは、全然違っていた。夏の陽ざしを受け、緑の葉っぱの色も木の幹の色も、濃く強く光輝いている。森の様子が、猛々しく悠然としている。
 直人はこの写真から目が離せなかった。
 …きっと、純は強くなれと俺に言っている。
 そして、その写真の裏には純からのメッセージが残されていた。

“直人、あとを頼むぞ
俺がいなくても直人は大丈夫
ありがとう、大好きだよ

俺の心の友、直人へ”