「母さん、きっと、直人が僕を探してここに会いに来てくれるから……
 その時にこの写真をプレゼントして……」

 和美は胸が締め付けられて息ができないほど苦しかった。

「純、何言ってるの……
 自分で渡せばいいでしょう……」

 和美は、純にとって酷な事だと分かっていた。でも、自分の死を認めてしまえば生きる活力は沸いてこない。

「……うん。
 でも、きっと、渡せないんだ……
 だから、母さんにお願いしていい?
 直人は必ずここに来てくれる……
 その時に、僕の思いを届けたいんだ……
 母さん、お願い……」

 和美は純の机の引き出しからノートを取り出した。


「分かった…… 約束する。
 じゃ、何を書けばいいの?……」

 和美は溢れ出す涙を必死に抑えていた。
 やっぱり純は直人に会いたくてたまらない。

「純、直ちゃん、呼ぼうか?
 今日、電話したら明日には来てくれると思うよ」

 純はいつものように首を横に振った。

「直人に僕のこんな姿を見せたくない……
 直人は優しいから、きっと、学校にも家にも帰らなくなる……
 そんなの嫌だから……
 だから僕の事は、誰にも言わないで……
 直人がここに来てくれた時に、僕の事を分かってくれればいい。
 僕は、直人の意思でここに来てくれる事を待ってるんだから……」