「母さん……
 今日は、すごくいい天気でしょ?」

 和美は純の部屋の窓のカーテンを開け、外を確かめた。

「本当だ、すごくいい天気。よく分かったね、純」

 純はまたクスッと笑った。

「目を閉じてたら外の景色が見えたんだ。
 真っ青な空に、雲がプカプカ浮かんでて……
 今日は天気がいいんだなって思ったら、目が覚めた……」

 和美は寝ている純に麦茶を飲ませた。

「冷たくて美味しい……」

 和美の高鳴る心臓は、少しずつ落ち着きを取り戻す。

「母さん、僕のデジカメを取って」

 和美は純の机の上に置いてあるデジカメを、純に渡した。

「母さん、そこの窓から見える森の景色をこれで撮ってくれない?
 僕は、起き上がる元気がないからさ……」

 和美は純に言われた通り、一番大きな窓から見える川に続く森の写真を撮った。そして、純はその和美が撮った写真を見て、静かに頷いた。