そうしていると、すずと佑都が戻ってきた。すずは気に入った物を見つけたみたいで、大きな紙袋を下げて楽しそうだ。
 直人は佑都の顔を見て、大切な事を思い出した。

「あ、やっべ~~、忘れるとこだった」

 直人はそう言うと、さっき和美からもらった青色の封筒を自分のリュックに大切にしまい、代わりにもう一つの手紙を取り出した。

「佑都、いおり、覚えてる?
 俺の妹でお前の幼なじみ」

 佑都は少し嬉しそう顔で頷いた。

「いおりから佑都へのラブレターを預かってたのを忘れてた。
 あと、イケメンになった佑都の写真も撮ってきてって頼まれてたんだ」

 直人はそう言いながら、いおりからの手紙を佑都に渡した。そして、ポケットからスマホを取り出すと、すずがそのスマホを取り上げた。


「佑都君の写真は私がたくさん撮ったから、大丈夫。
 あとで電車の中で直人にも見せてあげるから」

 直人は呆れたように二人を見て笑った。そんな三人を見て和美も笑う。

「佑都、お前も純の弟だから、すずに惹かれるのも分かるけど、でも、それは俺が許さない。
 いおりも可愛いぞ。俺はいおりをお薦めする」

 和美はそんな三人のやり取りを見て、久しぶりに心の底から笑った。


「和美おばちゃん、佑都。
 この二日間、色々お世話になりました……
 色んなたくさんの事があり過ぎて、あんまり、おばちゃんや佑都とはちゃんと話せてないような気がするけど、でも、また、遊びに来るから。
 っていうか、何度も来ます……
 いや、来たいんです。 来ていい?」

 和美は涙を浮かべて「もちろん」と大きく頷いた。
 そして、和美と佑都は手を振って駅に向かっていく二人を見送ると、久しぶりに手をつないで車へ向かった。純がもたらしてくれた小さな幸せを二人で噛みしめながら。